第31回:8月29日「軍隊屋で息抜き」



『10年10万キロストーリー4』刊行記念!

ようやく宿も落ち着き、サンプトペテルブルクの街を散策。
ネット環境も悪くないなと思いつつ仕事をしていると、今度は違うトラブルが。








■仕事の合間に


今朝は、朝食後に斜め向かいの「SASラジソンホテル」のビジネスセンターで送稿。カメラマンの田丸さんが、写真のデータ量を軽くするのを忘れているのにこちらも気付かず、2時間で6カットしか送れなかった。すこしも進まない“進行状況”のバーグラフを見詰めながらジッとしているのにも忍耐力が要る。他の客がいる時はいいが、職員の若い女性3人と広くない部屋で何もしないでいるのは、けっこうツラい。

いったんそこを出て、昨晩、看板だけ見付けたサープラスショップを覗く。ロシア3軍(空軍・陸軍・海軍)からの放出品を売っていた。狭い店内になぜか現役軍人の姿もあり、賑わっている。大きな軍隊を抱えている国の放出品屋だから、陳列されている商品からはリアリティのオーラが感じられる。現役の放出品もいいが、軍服や帽子、エンブレム、徽章や勲章のアンティークなどソ連時代のものがカッコいい。

時間があったらエルミタージュ美術館に行ってみたかったが、残りの写真を送らなければならないし、原稿も書いておきたい。田丸さんとアレクセイとは2時間前に別れ、午後8時にホテルで集合するまで自由時間とする。






■今度は停電

先にホテルに戻り、原稿の続きを書いていたら、いきなり停電。ニューヨークに続いて、サンクトペテルブルクもかと窓の外を見ると、他の建物では煌々と電気が点いている。停電なんて、何十年ぶりの体験。さっきまでのラジソンホテルで、iBookのバッテリーを使い果たしてしまい、原稿を書くことができない。サンクトペテルブルクって街は、ホントに毎日いろいろと苦しませてくれる。

しょうがないから外で仕事をすることに。店の内外装とシステムを、スターバックスコーヒーをまんまコピーしたような、「リパブリック・オブ・コーヒー」にでも行って続けるかと、バックパックに必要なものを詰め込んで飛び出す。原稿を書くのに都合のいいテーブルと椅子は空いているのだが、コンセントがどこにもみつからない。

そこはあきらめ、次に昨日行った「Cafe Max」という大きなインターネットカフェに向かう。真ん中が普通のテーブル席になっていて、覗いたら柱の下にコンセントがある席が空いている。コーヒーを買って戻ってきたら、その席が金持ち不良少女グループ(?)に占拠されてしまった。仕方なく、ノートに手書き。

ホテルのオバちゃんが「停電は7時にハラショーよ」とジェスチャーで伝えてくれたので、7時にホテルに戻る。7時15分に電気は復活した。


■カッコイイレストラン発見

一昨日から眼を付けていた、ファサードがカッコいいカフェ&レストラン「プロパガンダ」に行ってみる。内装も、赤と黒を基調としたロシア・アヴァンギャルド調でまとめてあり、とてもカッコいい。このままロンドンやニューヨーク、東京に持ってきても評判になるだろう。しかし予約がなく、あっさり断られる。そういえば、ラジソンホテルで写真を送稿中、明らかにドイツ人と思える客が、このレストランの予約を取って欲しいとコンシェルジェに頼んでいたっけ。

踵を返し、ヒューゴ・ボスとラジソンホテルの間の大通りを行き、五差路を右に入ったところの中華料理店「Bamboo Paladice」で夕食をとる。一昨日の、ホテルの一階にあるの中華料理屋よりレベルが高く、かつ安かった。

(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)