第18回:8月17日「ロシア買い物事情」



『10年10万キロストーリー4』刊行記念!

現在、中央シベリアを代表する大都市、クラスノヤルスクに滞在中。旅に必要な物をそろえるため、今日は通訳のイーゴリさんなしで街に買い物に出かける。キリル文字がわからない金子浩久が見たものは……。


■予測不可


今日は日曜日。今後必要となるものなどを買い物がてら、クラスノヤルスクの中心街をパトロール。中心街といっても、クラスノヤルスク・ホテル裏の3本の通りの500mぐらいに店などは集中している。

本屋、文房具屋、コンピュータ用品店、電気屋、カジュアルウェアショップなどで捜し物があったが、店自体の数が少ない。かわりに目に付くのが、なぜか靴屋と時計屋。日本の“mono”系男性誌はクラスノヤルスク特集を組めばいいじゃないの、と思うのは時期尚早。残念ながら、目の肥えた日本のマニアが納得するほどのものはない。

品揃えの点よりも戸惑ってしまうのは、やはりキリル文字の看板とディスプレイ方法だ。何屋なのか外から窺い知れない。仮に、何屋か判明しても、店の規模が読めないのだ。地味ィな構えの店でも、入ってみると奥がずっと深かったりするから油断できない。なかには、看板も出していない店もある。
デパートは、入ってしまえば一目瞭然だが、小規模商店の集合で、同じような品揃えのところが続く。東京上野のアメ横のような感じ。でも、見るだけでも飽きないことは確か。


■サービスはまだまだ

あまり愉快でないのは、やはり店員の無愛想と融通の利かないところだ。「いいサービスをして付加価値を高めることが利益につながる」というメカニズムが、まだ発生していないのだろう。モノの価値はまだ実体価値や物質価値だけで判断されていて、サービスやデザイン、ブランドといった付加価値が存在していない。本格的に資本主義を導入して十数年だから無理もない。
ということは、そういったロシアにはビジネスチャンスがゴロゴロしているということをも意味しているわけだ。

ついでに記しておくと、クラスノヤルスクまでに訪れた街では、カフェやレストランなどの食事ができる店の数が、街の規模に比して異様に少なかった。「ロシア人は、あまり外食をしないから」
とイーゴリさんは解説してくれるが、独身者で自炊する時間のない忙しい人には、これじゃ不便だろう。
「ロシアには、忙しい人はあまりいませんから大丈夫です」
忙しい人がいない国というのは、それはそれである意味、いい国ですよね。ハラショー。

(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)