第11回:8月11日「続発するメカトラブル」



『10年10万キロストーリー4』刊行記念!

1996年型「トヨタ・カルディナCZ」で、ユーラシア大陸横断を目指す。調子よく走っていたカルディナだが……。


■ どれかが狂っている

チタを出て、再び国道「M55」で西を目指す。街を出ると、これまでとはすべてが一変する。凹凸や繋ぎ目の目立たない舗装道路、開けた視界。牧草地や草原と樹々の緑が、眼に眩しい。走りやすく、気分も朗らかになってくる。村と村をつなぐ部分では、 110~120km/hで巡航できた。

だが、調子よく走っていたカルディナに異常が起こった。突然、メーターパネル左下の、何かのインジケーターが一瞬ポワンと光って、消えたのだ。突然のことだったので、何の警告だかわからない。もしかしたら、錯覚だったのかもしれない……。
しばらく走ると再び点灯した。燃料の残量警告灯だ。燃料計の針は、まだ5分の3を残した位置にある。オドメーターは、360km余り。どれかが狂っている。いったいどれが正しいのか?

様子を見ながら走り、インジケーターが常時点灯し始めた460kmを過ぎたところで給油。45リッター入り、給油口を覗き込んで確認したら、ほぼ満タンだった。ちなみに、ロシアのガソリンスタンドは、どこも5リッター刻みの前金払いでしか入れられず、きっちり満タンにするのが難しい。
わがカルディナのリーンバーンエンジンは、走り方や道路条件によって燃費が左右される傾向がある。急加速や勾配の急な登り下りが多いところでは、リッター10km/リッター程度に落ち込む。いい条件が重なると、13km/リッター前後は走るのだが。

ちなみに、省エネ運転を行うには、スロットルペダルを極力、すこしずつ踏むことだ。カルディナは、メーターパネル右下に「ECONO」と緑色に点灯するインジケーターがあり、リーンバーン(希薄燃焼)時に点灯。意識して走れば燃費が向上する。


■ 日本人そっくりの人々

念のため、ウラジオストクの自動車用品店で購入しておいた、軍用車が装備していそうな鉄製のモスグリーンのガソリンタンクにもガソリンを満たした。
給油ついでに、ちょうど向かいにあったタイヤ屋で、カルディナが履くピレリP6の空気圧をチェックしてもらった。測定代5ルーブルを払ったが、2.0kg/cm2の指定空気圧から下がっていなかった。

警告灯の問題に加え、数日前からキュルキュル鳴きだしていたパワーステアリングとジェネレーターのベルト音がさらに目立つようになってきた。発進する時など、まわりの人々の視線が集まるほどだ。ハバロフスクから続いた“極悪ダート”での激しい上下動により、パワーステアリングポンプとジェネレーターの取り付けが緩み、ベルトの張りが失われたらしい。
ボンネットを開けて調べると、ベルト自体はきちんとプーリーをまわしている。田丸さんが取り付けた電流計でチェックすると、きっちり15アンペア出ているので、大問題ではない。ただ、明らかにパワーステアリングのアシストは弱くなっており、ハンドルはちょっと重い。

満タンにし、再び走り出すと、燃料残量が5分の3ぐらいから針の動きが渋くなり、しまいに動かなくなる。燃料計は信用しないで、なるべく満タンにし、オドメーターの数字で500kmを目安に給油して走ることにする。もう一度給油し、ウランウデに到着した。

ウランウデは、ブリヤート自治共和国の首都だから、かなり大きい。もともとモンゴロイド系少数民族の土地だったので、日本人にそっくりの顔つきの人が多い。街で一番大きな「ブリヤーチヤホテル」にチェックイン。今まででもっとも立派なホテルだが、値段はシングルルームが600ルーブル(約2400円)と、内容に比してリーズナブルだ。

この近くに住む、通訳イーゴリさんの両親と叔父さんがホテルを訪ねて下さり、6人で近くのアゼルバイジャンレストランで夕食。965ルーブル(約3860円)をご馳走になってしまった。

(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)


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ウラジオストクの自動車用品店
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レーニン像の前にて
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ご覧のとおり、日本人に似た人が多い。ウランウデは、モンゴルに通じる自動車道や、貨客列車のキーポイントでもある。