第12回:8月12日「スピード違反で捕まる?」



『10年10万キロストーリー4』刊行記念!

ウランウデを出発し、バイカル湖南端のイルクーツクへ向かう金子浩久。雄大なロシアの大地を地平線に向かって走る道路の先に、待ちかまえているものとは……。


■ 警官に停められた

ウランウデの街を出て、国道「M55」に乗るまで、ホテルからイーゴリさん両親の「モスクビッチ2141S」に先導してもらった。彼らとは、国道の入り口で別れた。

今日も好天に恵まれ、ベルトからのキュルキュル音と燃料メーターの不調以外は快調(?)に走る。
地平線まで続く草原と白樺林のなかの一本道。道のはるか先に、右直角コーナーが見えた。1日走っていると3~4回、こういうコーナーが忽然とあらわれる。
曲がりきった先に、警官ふたりと「ラーダ」のパトカーが1台。こっちへこいと、停められた。「コーナーの手前に、50km/h制限の標識があっただろ?」

「96km/hも出ていたんだぞ!」
怒られながら、例のハンドマイク型計測器の数字を見せられた。パスポート、国際免許、クルマの登録書類などをチェックされるが、「これからは気を付けて」と放免された。こちらのことは何も記録しなかったので、取り締まりというより“警告”だ。田丸さんともども、すべてのスピード制限の標識には従ってきたつもりだが、直角コーナーの前にあったかどうか……。まあ、いい。

この時は停車されられたが、これ以降もスピード違反取り締まりには何度か遭遇した。だいたい、コーナー直後や長い直線の終わりでやっている。対向車がパッシングで教えてくれて、難を逃れたこともある。


■ ロシアの道路標識事情

標識類に関していえば、工事や村の入り口などでの減速指示はほぼ完璧だった。まず、70km/hが出て、50km/、40km/h、場合によっては30km/hと、順を追って速度の低い標識が続く。

一方、方位方角や地名の標識は圧倒的に少ない。分岐路などでの指示がないから、何度も道を間違えたり、判断が付かずに通行人に訊ねた。道路の整備とともに、標識についても改善が望まれる。欧米では常識化している自動車旅行(オートツーリズム)のインフラストラクチャーが、ロシアではまだほとんど何も整備されていない。


























■ 懐かしむイーゴリさん

イルクーツクは、通訳のイーゴリさんが大学生時代を過ごした街。「訪れたのは卒業以来初めてだ」と懐かしがっていた。キーロフ広場の北側に面する「ホテルアンガラ」にチェックイン。昨日の「ブリヤーチヤホテル」よりもさらに大きくて近代的だが、料金も高めだ。

ホテルから歩いて、陸上競技場内のオシャレ風レストランで食事。これまでのレストランやカフェと違い、インテリアにコストと神経を遣い、料理の盛りつけにも凝り、客をエンターテインさせようという、日本や欧米では当たり前の経営方針がうかがえる店だ。一部はデリカテッセンになっていて、さまざまな食料品を売っている、ここで、ロシアでは初めて、コーヒー豆を売っているのを見た。今までは、インスタントコーヒーしか見たことがなかったのだ。

ちなみにその昔、イーゴリさんの大学卒業記念パーティがこの店で行われたそうだ。当時は普通のロシアスタイルのカフェで、「水餃子をたらふく食べたのを憶えている」と語っていた。

(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)


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東西の人が同居するウランウデでのスナップ。
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路傍で売っていた「オムリ」という30cm大の魚と、その薫製。薫製は1匹15ルーブル(約60円)。「ニシンとタラに似て美味でした」。
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イルクーツク州都のイルクーツクは、シベリア地方の大工業都市。ちなみに、石川県金沢市と姉妹都市提携を結んでいる。
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高いホテルだけあって(?)、部屋からインターネットに接続できる。
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