第35回:9月1日「緩い懲役囚みたいなものか」



『10年10万キロストーリー4』刊行記念!

サンクトペテルブルクからリューベックへ向かう「トランスフィンランディア号」。
フェリーの中はあいかわらず退屈。食べて寝て、食べて寝て……。








■ロシア人と映画を見る


7時30分からの朝食後、ゆっくりとコーヒーを2杯飲む。ここのコーヒーは、ちゃんとしたレギュラーコーヒー。ロシアでは、サンクトペテルブルのそれなりの店以外は、すべてインスタントだった。

部屋に戻って、持参した岩波新書「ロシア・アヴァンギャルド」の続きを読むが、船の揺れのせいか、ウトウトしてしまう。学者が書いたわりには面白い本なのだが、眠気には勝てない。目が覚めたら、もう昼食の時間だった。スチュワードの“ブロンソン”が迎えに来た。
眠って、食べて、眠って、食べて……。ロクに身体も動かさない。これじゃブロイラーか、緩い懲役囚みたいなものか。

昼食後、いつも3人で一緒にビデオを見ているロシア人トラックドライバーのうちのひとり(ローワン・アトキンソン似)が、映画『ファスト・アンド・フューリアス2(邦題:ワイルドスピード2)』を見始めた。見逃した作品なので、一緒に見ることにした。クリスティン青木の乗る、アメリカ仕様の改造「ホンダ S2000」がカッコいい。 5時過ぎに、旧東ドイツのサスニッツに寄港する。整然とした景観で、スナイプ級ぐらいのヨットを楽しんでいる人が港にたくさんいた。
すぐに、夕食。重い肉が続いてきたので、今晩はチリコンカンライスとサラダ。サウナに入ってから、あらかじめ例のブロンソン似のスチュワードから買っておいた、ベックスビールの小瓶2本づつを涼みながら飲む。サスニッツを11時過ぎに出港。

(文=金子浩久/写真=田丸瑞穂/2003年8月初出)